2014年8月14日〜18日 ひとり芝居 横浜ローザ

2014横浜ローザを終えて≫

 

 私がこの芝居のモデルとなった白塗りの老娼婦メリーさんと出会ったのは、23年前の5月の横浜みなと祭の日でした。凛と前を見据えた眼差しが私に向けられた時、「あなた私の生きてきた今までをどう思うの?答えてちょうだい!」そう激しく問いかけられたような衝撃を受けました。それから彼女の足跡を追いかけ取材し始めたのです。街中の人達に~ そして彼女が立ち寄るお店にと~。彼女は自分の過去をひとことも語りませんでしたが、取材を続けているうちにその中から見えてきたものは、この街にかつて米軍キャンプがあり、伊勢佐木町の奥には米軍の飛行場があり、またカマボコ兵舎があり、夕方5時になると門が開き沢山の米兵が街に繰り出してくる光景でした。彼女のあの白い顔の中に封じ込められた無念さ、そして故郷に仕送りをし続けている事など、それらをひとつひとつ解き明かし、探し、問いかけ続ける中であっという間に18年が経ちました。

 

 彼女の故郷は、山々に囲まれた緑の多い、大きな川の流れる美しい村です。その美しい村に、私はお墓参りに行ったことがあります。なぜか私は不意に涙があふれ、彼女に何か言ってほしいと問いかけるような気持ちになりました。その時、不思議なことに聞こえてきたのです…「あなたはあなたを探しに来たのね!」・・・・「えっ?!」私は辺りを見回しましたが、ただ、一輪の野あざみが風に揺られて微笑んでいるだけでした。

 

 私の、彼女を追いかけた著書「白い顔の伝説を求めて」にもありますが、その後、帰りに晩年を過ごした養老院を訪ね、彼女の過ごした部屋を見せていただきました。帰りがけに職員の方に「大きな男の人を怖がったりしていました」と聞いた時、私は愕然としました・・・・。彼女はあの白塗りの化粧をとった後も、人生を取り返すことができなかった・・・・のかと。

 

 帰りの列車の中から見た彼女の故郷の山々の美しさが胸にいたく突き刺さってきました。彼女はもういない、でもあの時、出会い、そして受け取ったメッセージは、最後に握手した時の彼女の小さな手の冷たさと共に今も私の中に生き続けています。 そんな祈りを込め、今年また、ローザの命が蘇りますよう舞台に立ちたいと思います。

 

 来年の4月、作家 杉山義法先生と私の願いでもあったアメリカ公演が、終戦70周年記念公演としてニューヨークジャパンソサエティの招聘を受け、実現する事になりました。海を越えこの地から、彼女の命のメッセージを届けたいと思っております。今回はその先行公演として新しい演出で挑みました。 ご覧になっていただく皆様の心に、平和への願いと共に、ローザの心が届きますように・・・・・。

 

五大路子

 

 

 

2013年8月15日〜19日 ひとり芝居 横浜ローザ

2013横浜ローザを終えて≫


 

今年のローザは、「メリーさんは亡くなるとき、何を見て、何を感じたのだろうか」と深く気持ちを巡らせ、“今”というものを感じながらの稽古となりました。

 

 『私ら、時代に使い捨てにされてたまるものですか!』元次郎さんの言葉が蘇り、『ヨコハマメリー』の映画の中で元次郎さんが歌うマイウェイの歌詞「私は一度もしていない 人を裏切ることだけは」のところで何度も何度も何度もうなずくメリーさんの姿が頭から離れませんでした。

 

 戦争に翻弄されながらも一生懸命生きぬいたひとつの命、二度と起こしてはいけない戦争、ひとつの命の尊厳とその重さを強く感じながらの稽古が続きました。

 

 そして 815日 幕が開きました。

 

 お客様が私のセリフを耳をそばだてて聞こうとして下さっているのを感じ、体が震えていました。お客様はもはや観客ではなく、時空を超え共にローザの記憶を旅して下さった同行者のように感じていました。

 

 そして真っ白に顔を塗り、白いドレス・太い黒いくまどりのようなアイラインに真っ赤な唇、手には紙袋を持ち街で立っていたときの姿になり、ラストシーン・一輪のバラを持ち、会場の中を黙々と背をかがめ歩いているとき、私には光の中にずっと続いている一本の道が見えてきていました。会場は拍手の渦なのに、シーンと静かな空間の中吸い込まれていくようでした。

 

 舞台の奥の「心」と書かれた幕の先で輝くオレンジの光は―2013年の横浜ローザの命をしっかりと受けとめていてくれました。

 

 今年、この横浜ローザにたくさんの愛を注いで下さった皆様、本当にありがとうございました。また来年もローザに会いにいらして下さい。お待ちしております。

 

 再来年の横浜ローザ20周年には、日本のみならず、世界中へローザの心を伝えていきたい!そんな夢を描いています。

 

 9月からは、10月に行われます、横浜夢座 第11回公演(プレ15周年公演)『俣野町700番地 夢の国~ドリームランドへの手紙~』の稽古に入ります。そちらも是非いらして下さいね!

 

 まだまだ暑い日が続きます。皆様、どうぞご自愛下さいませ。

 

2013.08.20 五大 路子